幻想

僕は 木々のなかの道を 君のあとをついて 一緒に歩いていた どこまで来たのだろう そう思って僕は スマホに目をやる 電波が届いていないらしく 地図は出てこない そうこうしているうちに 君は 僕の視界から消える あっ と思って僕は 速度を上げた 走った でも君は 見えてこない 脇に行く道はない 左の斜面を登ることも 右の斜面を転がり落ちることも 考えられない 君は消えた 僕の目の前から 僕の世界から あっという間に消えた 道には 馬のものらしい糞と いつ落ちたかわからない落ち葉と VTT の輪だちが残っている 君の痕跡はない どこに行ったのかもわからない 君は 僕の前を歩いていたのだろうか 足を止めて 後ろを振り返る 君が笑顔で駆けてくる 君は 僕の後ろを歩いていたのだろうか